読書家にとってこれほど恐ろしく忌まわしい体験はないでしょう。久しぶりに読み返そうと思って手に取った古いハードカバーの本を開いた瞬間ページの間からササッと銀色の光沢を放つ虫が走り出し視界から消えた時のあの戦慄を。それは本を愛する者にとっての天敵「シミ」でありもし本棚周辺でシミという虫が一匹いたらあなたの蔵書コレクションはすでに静かなる破壊の危機に瀕していると言っても過言ではありません。シミはその名の通り紙を食べる魚のような動きをする昆虫で彼らが好むのは紙そのものに含まれるセルロースだけでなく製本に使われている糊やデンプン質の接着剤、さらには紙の表面に塗布されたコーティング剤などです。彼らは鋭い口器を使ってページの表面を薄く削り取るように食害しその跡は不規則なレース状の穴となったり文字が判読不能になるほどの欠損となったりします。特に被害に遭いやすいのが湿気を吸いやすい和紙や古い洋書、そして一度も開かれることなく長期間放置された全集などです。一匹見つけたということはその本棚の奥や並べられた本の間にはすでに卵が産み付けられ幼虫たちが孵化している可能性が極めて高く被害は一冊だけにとどまらないことが多いのです。彼らは暗くて狭い場所を好むため本と本の間や背表紙の隙間はまさに理想的な住処となります。この悪夢から抜け出すためには一度本棚の全ての本を取り出し一冊ずつページをパラパラと捲って風を通し虫や卵を物理的に排除する作業が必要になりますが数千冊の蔵書を持つ愛書家にとっては気の遠くなるような重労働となるでしょう。しかしこれを怠れば大切な初版本や二度と手に入らない貴重な資料が彼らの餌食となりボロボロの紙屑へと変貌してしまいます。また本棚自体の配置も重要で壁にぴったりとつけて設置すると裏側に湿気が溜まりやすくなるため壁から数センチ離して空気の通り道を確保することも有効な対策の一つです。さらに防虫剤を図書館のように配置し定期的に配置換えを行うことで彼らに安住の地を与えない工夫も求められます。古本から現れた一匹のシミはあなたの大切な知的財産を守るための戦いのゴングであり即座に行動を起こさなければ後悔することになるでしょう。