今年の五月、私はリビングの窓からすぐ外にあるベランダの物干し竿の支柱に、小さな蜂の巣が作られているのを発見しました。大きさはちょうどピンポン玉くらいで、白っぽい灰色の小さな塊に、一匹の蜂が止まってじっとしていました。初めて見る蜂の巣に恐怖を感じましたが、まだこれほど小さいのであれば自分で対処できるのではないかと考え、慎重に準備を始めることにしました。まず、インターネットで蜂の種類を確認したところ、後ろ足が長く垂れ下がっている特徴からアシナガバチであることが分かり、性格がそれほど激しくないという情報を得て少し安心しました。駆除にあたって私が最も重視したのは、蜂を刺激せずに一撃で仕留めることです。ホームセンターで「プロ仕様」と謳われた、強力なピレスロイド系の蜂専用殺虫剤を購入しました。これは三メートル先まで強力な霧が届くタイプで、接近しすぎずに作業ができるのが魅力でした。決行の時間は、蜂が眠りにつき、全ての個体が巣に戻る夜の九時に設定しました。夜間は蜂の動きが鈍くなるとはいえ、万が一の反撃が怖かったので、私は冬用の厚手のダウンジャケットを着用し、顔にはスキー用のゴーグルとマスク、首にはマフラーを巻いて、肌の露出を一切なくしました。ベランダに出る際も、網戸越しに一度ライトを当てて巣の状態を確認し、蜂が動いていないことを確かめてから静かに外に出ました。三メートルほどの距離を取り、風向きを確認して、一気にスプレーのレバーを引きました。シュッという激しい音と共に、白い薬剤が巣を包み込みました。蜂は一瞬羽を震わせましたが、薬剤の即効性が強かったのか、そのままポロリと床に落ちました。私は念のためにさらに数秒間、巣と落ちた蜂に噴射を続け、すぐに家の中に戻って扉を閉めました。三十分後、恐る恐るベランダに戻ると、蜂は完全に息絶えていました。割り箸を使って蜂を拾い、新聞紙に包んでビニール袋へ。巣も手袋をした手で簡単に取り除くことができました。終わってみれば、作業時間は実質一分にも満たないものでしたが、事前の準備にかけた時間が安心感を与えてくれたのだと思います。もしあのまま放置していたら、今頃はベランダに出ることもできなくなっていたでしょう。自分で駆除したことで、業者を呼ぶ手間と費用を節約できただけでなく、自分の家の異変に自分で対処できたという満足感がありました。ただし、次はもっと早く、巣が作られる前の段階で忌避剤を撒いて予防しようと強く思いました。蜂の巣駆除は、小さいうちであれば決して不可能ではありませんが、装備と時間帯、そして何より「絶対に無理をしない」という心構えが、安全な成功には不可欠だと実感した体験でした。