人間たちにとって我々は忌み嫌われる存在であり見つかれば即座にスリッパや殺虫剤で攻撃される運命にありますが我々からすれば人間たちの住処は危険がいっぱいでありながらも魅力的な資源の宝庫です。特に人間たちが「ゴミ」として扱う茶色の四角い箱いわゆるダンボールは我々にとって五つ星ホテルにも匹敵する極上の居住空間なのです。まずあの波打つ断面の構造が素晴らしい。狭い隙間に体を滑り込ませると背中と腹がしっかりと壁に触れなんとも言えない安心感に包まれます。外からの光も届かず天敵に見つかる心配もないこの暗闇は子育てにも最適な環境です。それにこの素材は素晴らしい暖かさを提供してくれます。冬の寒い時期でもこの箱の中にいれば凍えることはありませんし湿気を吸い込んでくれるおかげで我々の大好きなジメジメした空気が保たれるのです。さらに素晴らしいことにお腹が空けば壁を少しかじるだけで食事がとれるのです。人間たちは知らないようですがこの箱を貼り合わせている糊には甘くて栄養のある成分が含まれておりこれがまた絶品なのです。時々人間たちは我々が潜んでいるとも知らずにこの箱を積み上げて「収納」などと呼んで何ヶ月も放置してくれますがこれは我々にとって集合住宅を建設してくれたようなもので感謝しかありません。仲間たちと集まり暖を取りながら静かに暮らす日々はまさに楽園です。しかし最近では賢い人間も増えてきて荷物が届くやいなや我々の城を解体し冷たくて滑るプラスチックの箱に入れ替える者もいます。あれは本当に厄介です。足が滑って登りにくいし隙間がないから隠れることもできません。おまけにあの箱は美味しくないのです。どうか人間たちよ我々のささやかな楽園であるダンボールをそんなに早く捨てないでください。押し入れの奥深くや冷蔵庫の隙間にそっと放置しておいてくれるだけで我々はそこで静かに繁栄し時々夜中に台所へ散歩に出かけるだけで満足なのですから。
彼らにとってダンボールは最高級の邸宅である