鳩の種類の中でも、特に歴史的、文化的な意義を深く持っているのがシラコバトです。埼玉県にお住まいの方や鳥に詳しい方ならご存知の通り、シラコバトは埼玉県の県鳥として指定されており、地域のシンボルとして親しまれています。シラコバトの特徴は、全身が淡い灰色がかった上品な白色で、首の真後ろに黒い細いリング状の模様が入っていることです。このリング模様から、英語では「リングネックダブ」とも呼ばれています。キジバトやドバトと比べると一回り小ぶりで、尾羽が長く、飛んでいる姿も非常に優雅です。シラコバトの歴史は興味深く、江戸時代に海外から持ち込まれたものが野生化したという説や、将軍の鷹狩りの獲物として大切に保護されていたという記録が残っています。かつては関東平野に広く分布していましたが、農薬の使用や生息環境の変化、さらにはドバトやキジバトとの競争などの影響で個体数が激減し、一時は絶滅の危機に瀕しました。現在では国の天然記念物に指定され、埼玉県越谷市などを中心に限られた地域で保護活動が行われています。シラコバトが好む環境は、古い農家や寺社が点在する、いわゆる屋敷林のある風景です。彼らは家畜の飼料やこぼれた穀物を好んで食べる習性があり、人間との距離が非常に近い鳥でもありました。しかし、宅地開発によってこうした屋敷林が失われることは、シラコバトにとって致命的な打撃となりました。最近では、地域の小中学生がシラコバトの観察会を行ったり、保護団体が植樹活動を通じ環境整備を進めたりするなど、地域一体となった取り組みが実を結びつつあります。このように、鳩という身近な存在の中にも、地域の歴史と深く結びつき、人々の手によって守られなければ消えてしまう繊細な種類がいるのです。私たちが公園で鳩を見かけるとき、もし首に黒い細い輪がある白い鳩を見つけたら、それは長い年月を越えて受け継がれてきた埼玉の宝物かもしれません。鳩の種類を知ることは、その土地の歴史や文化を紐解くことでもあります。シラコバトが再び関東の空を自由に舞う日が来るように、私たちは身近な自然環境のあり方を見つめ直し、共生のための努力を続けていく必要があります。
埼玉県に生息する県鳥シラコバトの種類と歴史的背景