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衣類に虫?その正体と見分け方
クローゼットから出したセーターに穴が。その犯人はいったい誰なのでしょうか。衣類を食べる害虫にはいくつかの種類があり、その正体を知ることは、効果的な対策を立てるための第一歩となります。日本で衣類の加害害虫として知られるのは、主に「イガ」「コイガ」「ヒメカツオブシムシ」「ヒメマルカツオブシムシ」の四種類です。面白いことに、衣類を食べるのはすべて「幼虫」の時期だけで、成虫は衣類を食べません。まず、蛾の仲間である「イガ」と「コイガ」です。成虫は、7〜8ミリ程度の小さな、淡い褐色の蛾です。クローゼットの中で、この小さな蛾が飛んでいるのを見つけたら、要注意です。彼らの幼虫は、ウールや絹などの動物性繊維を好んで食べます。特に「イガ」の幼虫は、自分が食べた繊維のクズなどを綴り合わせて、ミノムシのような筒状の巣(ケース)を作り、その中で生活するという特徴があります。衣類に、繊維のクズが固まったような、小さな筒状のものが付着していたら、それはイガの幼虫がいた痕跡です。一方、「コイガ」の幼虫は、食べた場所の周辺に、糸を張ってトンネルのような巣を作ります。次に、甲虫の仲間である「ヒメカツオブシムシ」と「ヒメマルカツオブシムシ」です。成虫は、3〜5ミリ程度の黒や褐色の斑紋がある、てんとう虫のような形をした小さな甲虫です。彼らは花の蜜などを好むため、屋外から飛来し、洗濯物などに付着して室内に侵入することが多いと言われています。そして、暗いクローゼットの中などで産卵します。孵化した幼虫は、毛虫のような形をしており、動物性繊維だけでなく、化学繊維や綿、さらには乾物などの食品まで食べる、非常に貪欲な害虫です。彼らの被害の特徴は、不規則な形に、生地を削り取るように食べることです。これらの害虫は、いずれも暗く、湿気があり、ホコリの多い場所を好みます。もし、クローゼットの中でこれらの成虫や、幼虫の抜け殻、あるいは糞などを見つけたら、それはあなたの衣類が危険に晒されているという、明確なサインなのです。
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ウールやカシミヤを守るための特別ケア
衣類害虫にとって、ウールやカシミヤ、アンゴラといった動物性の天然繊維は、最高級のご馳走です。これらのデリケートで高価な衣類を、虫食いの悲劇から守るためには、通常の衣類以上の、特別なケアと保管方法が求められます。まず、保管前の準備が何よりも重要です。これらの獣毛繊維は、皮脂や汗を吸収しやすく、それが害虫を引き寄せる最大の原因となります。ワンシーズン着用したセーターやコートは、必ずプロのクリーニングに出し、汚れと同時に、繊維の奥に潜んでいるかもしれない虫の卵を完全に除去してもらいます。クリーニングから返ってきた衣類は、ビニールカバーを必ず外してください。ビニールは通気性が悪く、内部に湿気がこもり、カビや変色の原因となります。代わりに、通気性の良い不織布製の衣類カバーをかけましょう。保管場所は、クローゼットの中でも、できるだけ湿気の少ない、風通しの良い上段が適しています。そして、一つの衣装ケースや引き出しに、衣類をぎゅうぎゅうに詰め込むのは避けましょう。衣類と衣類の間に適度な隙間があることで、空気が循環し、湿気が溜まるのを防ぎます。保管する際は、必ず防虫剤を一緒に入れます。この時、防虫剤が直接衣類に触れないように、ティッシュなどで軽く包んでから置くと、シミなどのリスクを減らすことができます。さらに万全を期すなら、「防虫シート」の活用もおすすめです。引き出しや衣装ケースの底に敷いておくことで、下からの害虫の侵入を防ぎます。そして、最も効果的ながら、忘れられがちなのが「定期的な虫干し」です。たとえシーズンオフであっても、半年に一度、天気の良い乾燥した日に、クローゼットから衣類を取り出し、風通しの良い日陰で数時間、風に当てます。これにより、湿気を飛ばし、万が一付着していた虫の卵などを振り落とすことができます。手間はかかりますが、この愛情のこもった一手間が、あなたの大切な一着を、来シーズンも美しい状態で保ってくれるのです。