夢にまで見たマイホームが完成し、真新しい木の香りに包まれながら新生活をスタートさせて、ちょうど一年が過ぎた頃でした。その悲劇は、リビングのフローリングの隅で、本当に些細なきっかけから始まりました。掃除機をかけていた私の目に、壁際にできた、ほんの小さな、塩をこぼしたかのような白い粉の山が映ったのです。最初は、壁紙の施工の際に落ちたパテの粉か何かだろうと、気にも留めずに吸い取ってしまいました。しかし、その数日後、また同じ場所に、同じような粉の山が再生されているのを発見しました。ここで初めて、私の胸に嫌な予感がよぎりました。スマートフォンで「フローリング 白い粉」と検索し、表示された画像と、目の前の光景が完全に一致した時、私は血の気が引くのを感じました。キクイムシ。その名前と、木材の内部を食い荒らすという恐ろしい生態を知り、私はパニックに陥りました。新築の、ピカピカだったはずの我が家が、見えない敵に内側から蝕まれている。その事実が、信じられませんでした。私はすぐに、家を建ててくれたハウスメーカーに連絡しました。担当者は、私の話を聞くと、すぐに調査に来てくれることになりました。調査の結果、原因は、フローリング材として使用された、海外産のナラ材の一部に、すでにキクイムシの幼虫が潜んでいたためだろう、ということでした。幸い、ハウスメーカーの保証期間内であったため、被害があったリビングのフローリングは、全て無償で張り替えてもらえることになりました。数日間にわたる大掛かりな工事の間、私たちは仮住まいを余儀なくされましたが、新しいフローリングが張られ、ようやく日常が戻ってきた時の安堵感は、今でも忘れられません。この一件は、私に大きな教訓を与えてくれました。それは、新築だからといって、害虫被害と無縁ではないということです。そして、問題が発生した時に、責任の所在を明らかにし、適切な対応を求めることができる「保証」の重要性です。あの小さな木くずの山は、私の夢のマイホームに潜んでいた、静かなる時限爆弾の存在を知らせてくれた、ぎりぎりの警告だったのです。