ゴキブリのメスは、自らの子孫を確実に、そして安全に繁栄させるため、産卵場所の選定には、極めて慎重になります。彼女たちが卵鞘(らんしょう)を産み付ける場所には、いくつかの明確な共通点があります。その条件とは、「暗い」「暖かい」「湿気がある」「餌が近い」、そして何よりも「安全で、外敵に見つかりにくい」ことです。あなたの家の中に、この五つの条件が揃った「危険地帯」がないか、徹底的にチェックしてみましょう。まず、最も警戒すべき場所は、やはり「キッチン」です。その中でも、特に以下のポイントは、ゴキブリにとって最高の産卵場所となり得ます。一つ目は、「冷蔵庫の裏や下」。モーターの放熱によって常に暖かく、ホコリや食べ物のカスが溜まり、結露による水分も確保できる、まさに完璧な環境です。二つ目は、「シンクの下の収納スペース」。配管からの湿気があり、暗く、洗剤や調味料の匂いで人間の注意が向きにくいため、安心して産卵できます。三つ目は、「電子レンジや炊飯器などの調理家電の裏側や内部」です。こちらも、常に熱を帯びており、食べ物の匂いが染み付いているため、格好の隠れ家となります。キッチン以外では、「洗面所」や「浴室」の周辺、特に洗濯機の下や、あまり使われていない棚の中なども要注意です。そして、意外な盲点となり、家中に被害を拡大させる原因となるのが、「段ボール」です。引っ越しや宅配便で使われた段ボールを、押し入れや物置に長期間放置していませんか。段ボールの波状の構造(中芯)の隙間は、保温性と保湿性に優れ、暗くて狭いため、ゴキブリにとっては絶好の産卵場所となります。ここに産み付けられた卵鞘が、段ボールと共に家のあちこちに移動し、新たなコロニーの発生源となるのです。これらの危険地帯を定期的に清掃し、整理整頓を心がけること。特に、不要な段ボールはすぐに処分する習慣をつけること。それが、ゴキブリに快適な産卵場所を与えないための、最も効果的な予防策となります。