衣類害虫にとって、ウールやカシミヤ、アンゴラといった動物性の天然繊維は、最高級のご馳走です。これらのデリケートで高価な衣類を、虫食いの悲劇から守るためには、通常の衣類以上の、特別なケアと保管方法が求められます。まず、保管前の準備が何よりも重要です。これらの獣毛繊維は、皮脂や汗を吸収しやすく、それが害虫を引き寄せる最大の原因となります。ワンシーズン着用したセーターやコートは、必ずプロのクリーニングに出し、汚れと同時に、繊維の奥に潜んでいるかもしれない虫の卵を完全に除去してもらいます。クリーニングから返ってきた衣類は、ビニールカバーを必ず外してください。ビニールは通気性が悪く、内部に湿気がこもり、カビや変色の原因となります。代わりに、通気性の良い不織布製の衣類カバーをかけましょう。保管場所は、クローゼットの中でも、できるだけ湿気の少ない、風通しの良い上段が適しています。そして、一つの衣装ケースや引き出しに、衣類をぎゅうぎゅうに詰め込むのは避けましょう。衣類と衣類の間に適度な隙間があることで、空気が循環し、湿気が溜まるのを防ぎます。保管する際は、必ず防虫剤を一緒に入れます。この時、防虫剤が直接衣類に触れないように、ティッシュなどで軽く包んでから置くと、シミなどのリスクを減らすことができます。さらに万全を期すなら、「防虫シート」の活用もおすすめです。引き出しや衣装ケースの底に敷いておくことで、下からの害虫の侵入を防ぎます。そして、最も効果的ながら、忘れられがちなのが「定期的な虫干し」です。たとえシーズンオフであっても、半年に一度、天気の良い乾燥した日に、クローゼットから衣類を取り出し、風通しの良い日陰で数時間、風に当てます。これにより、湿気を飛ばし、万が一付着していた虫の卵などを振り落とすことができます。手間はかかりますが、この愛情のこもった一手間が、あなたの大切な一着を、来シーズンも美しい状態で保ってくれるのです。
ウールやカシミヤを守るための特別ケア