大切にしていたお気に入りのセーターに、無惨な虫食いの穴を発見してしまった時のショックは計り知れません。その服は、もう捨てるしかないのでしょうか。諦める前に、被害の状況を冷静に確認し、修復可能か、それとも処分すべきかを正しく判断することが大切です。まず、判断の基準となるのが「穴の大きさと数」です。針の先で突いたような、ほんの数ミリの小さな穴が1〜2箇所程度であれば、修復できる可能性は十分にあります。特に、ウールやカシミヤのニットであれば、「かけはぎ(かけつぎ)」という専門的な修復技術で、ほとんどどこに穴があったか分からないほど、きれいに直すことができます。共糸(その服と同じ糸)があれば最も理想的ですが、なくても職人さんが近い色の糸を探して修復してくれます。料金はかかりますが、高価な衣類や、思い入れの強い一着であれば、検討する価値は十分にあります。また、小さな穴であれば、自分でダーニング(装飾的な修繕)を施し、デザインの一部として生まれ変わらせるという、クリエイティブな方法もあります。しかし、穴が1センチ以上に広がっていたり、複数の穴が広範囲に点在していたり、あるいは生地が薄く、擦り切れるように食べられていたりする場合は、残念ながら修復は困難です。そのような服は、潔く処分することを考えましょう。そして、虫食いを発見した際に、修復するか処分するかにかかわらず、絶対にやらなければならないことがあります。それは、被害にあった服だけでなく、その服と一緒に保管していた、すべての衣類をチェックし、洗濯またはクリーニングすることです。目に見える被害はその一着だけかもしれませんが、他の衣類にも虫の卵や幼虫が潜んでいる可能性が非常に高いからです。被害の拡大を防ぐためにも、この二次被害防止の処置は徹底して行いましょう。
虫に食われた服はもう着られない?修復と処分の判断