深夜のキッチン、リラックスタイムのリビング。平穏な日常に、あの黒光りする生命体が突如として現れた時、私たちの脳はパニックに支配されます。しかし、この最初の数秒間の行動が、その後の戦いの行方と、あなたの家の衛生状態を大きく左右するのです。恐怖と焦りから、ついやってしまいがちな行動が、実は事態をさらに悪化させる「NG行動」である可能性を知っておく必要があります。まず、最も多くの人がやってしまいがちな、最大のNG行動が、「スリッパや丸めた新聞紙で叩き潰す」ことです。確かに、手元にあるもので直接攻撃するのは手っ取り早く感じます。しかし、これには二つの深刻なリスクが伴います。一つは、ゴキブリの体内にいるかもしれないサルモネラ菌などの病原菌や、フンを周囲に撒き散らしてしまうことです。これにより、衛生的な二次被害が拡大します。そして、もう一つが、もしそのゴキブリがメスで、卵鞘(卵のカプセル)を抱えていた場合、潰した衝撃でその卵鞘が飛び散り、気づかない場所で数十匹の幼虫が孵化してしまうという、最悪のシナリオを招きかねないのです。次に、意外なNG行動が、「掃除機で吸い込む」ことです。一瞬で視界から消し去ることができるため、精神的なダメージは少ないですが、掃除機の内部でゴキブリが生き延び、紙パックの中で卵を産んだり、あるいは排気口から逃げ出したりする可能性もゼロではありません。もし吸い込んでしまった場合は、すぐに紙パックをビニール袋で密閉して捨てるなどの処置が必要です。遭遇した瞬間の恐怖は計り知れませんが、これらのNG行動を避け、冷静に殺虫スプレーを手に取ること。それが、被害を最小限に食い止め、安全に問題を解決するための、最初の、そして最も重要な一歩となるのです。